ホルモンは、体のさまざまな働きをコントロールする大切な物質で、内分泌腺と呼ばれる器官で作られています。
内分泌腺には、脳下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・膵臓・卵巣や精巣などがあり、これらの働きに異常が起こる病気を内分泌疾患といいます。

下垂体疾患

下垂体疾患

下垂体は、脳の視床下部のすぐ下に位置し、大きさは小指の先ほどしかない小さな器官ですが、全身のホルモンの働きを調整するホルモンの司令塔として重要な役割を担っています。

⚫︎ 先端巨大症

下垂体にできた良性腫瘍によって成長ホルモンが過剰に分泌される病気です。症状は、外見の変化(額・顎・手足など体の先端部分が大きくなる)に加え、頭痛・高血圧・糖尿病・いびき・多汗・関節痛などがあります。これらの症状から、家族などの指摘で発見されることもあります。また、心肥大などの合併症を起こす場合もあり、放置すると全身に影響が及ぶことがあります。治療は、腫瘍を手術で取り除くのが一般的です。ただし、腫瘍が大きくて手術が難しい場合や、手術後も成長ホルモンの分泌が多い場合には、薬物療法や放射線治療を併用します。

⚫︎ クッシング病

下垂体にできた腫瘍(多くは良性)によって副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) が過剰に分泌され、最終的に副腎から出るコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。症状は、顔が丸くなる(満月様顔貌)、首や体の中心部に脂肪がつく(中心性肥満・野牛肩)、皮膚が薄くなる、赤い線状のあと(赤色皮膚線条)が出る、高血圧、筋力低下、むくみ、にきびや多毛、女性では月経異常が起こることもあります。治療は、腫瘍を手術で取り除くのが一般的です。ただし、手術で十分な効果が得られない場合、薬物療法や放射線治療を併用します。

⚫︎プロラクチノーマ

下垂体にできた良性腫瘍によってプロラクチンというホルモンが過剰に分泌される病気です。症状は、月経不順、無月経、乳汁分泌(授乳していないのに母乳が出る)などで、放置すると不妊や骨粗鬆症の原因になることがあります。男性でも性機能低下や骨粗鬆症をきたすことがあります。なお、プロラクチンが高くなる原因には、下垂体腫瘍のほかに、視床下部・下垂体茎の腫瘍や薬の副作用、甲状腺機能低下症などよる場合もあり、血液検査にて何回かプロラクチンを測定し、いずれも高い場合は頭のMRI検査で病変がないか確認します。治療は、薬物療法(カベルゴリンなど)が一般的で、腫瘍が大きくて視野障害や頭痛などの症状が強い場合には手術を検討します。

⚫︎下垂体機能低下症

下垂体前葉ホルモンの分泌が低下する病気です。分泌が低下したホルモンの種類によって症状は違います。

成人成長ホルモン分泌不全症

成人ホルモンが十分に分泌されない病気です。原因の多くは、ホルモンを出さない下垂体腫瘍(非機能性下垂体腫瘍)が大きくなることで、そのほかに視床下部の異常、頭のけがやくも膜下出血、脳の手術・放射線治療後、出産時のトラブル、遺伝などが関係します。症状は、だるさ・疲れやすさ、意欲や集中力の低下、うつ傾向、性欲減退などのほか、筋肉量の減少、内臓脂肪の増加、脂質異常症、脂肪肝、糖尿病、骨粗鬆症などがあります。治療は、重症と診断された場合は成長ホルモンを自己注射で補います。

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)単独欠乏症

副腎皮質刺激ホルモンの分泌が低下すると、副腎でコルチゾールというステロイドホルモンが十分に分泌されず、副腎不全をきたす病気です。原因は、自己免疫の異常が関係すると言われていますが、完全には解明されていません。また、一部の抗がん剤の副作用によることもあります。初期では無症状なことが多いですが、進行すると全身のだるさ、体重減少、食欲不振、低血糖、低血圧などがみられ、命に関わる危険な状態になることがあります。治療は、ステロイドを飲み薬で補います。

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症

性ホルモンを分泌させるホルモン(LH・FSH)の分泌が低下し、性ホルモンが十分に分泌されない病気です。原因は、先天的な遺伝子異常や視床下部・下垂体の腫瘍、頭のけが、放射線治療、出産時のトラブルなどがあります。症状は、男性では性欲低下や筋力低下、無精子症などが、女性では無月経や不妊がみられます。治療は、ホルモン補充療法を行い、妊娠を希望していて不妊が改善しない場合は体外受精も選択に挙がります。

⚫︎尿崩症

体の水分を調節する抗利尿ホルモン(バソプレシン)の働きが弱まることで、体内の水がうまく保持できず、大量の尿が出る病気です。視床下部・下垂体腫瘍などによってホルモンの分泌が障害される「中枢性尿崩症」と、腎臓がホルモンに反応できなくなる「腎性尿崩症」に分かれます。症状は、大量の尿と強い喉の渇きで、脱水症や体重減少、だるさなどを伴うこともあります。治療は、原因に応じて行われ、中枢性ではホルモンを補い(デスモプレシン)、腎性では原因薬の中止や塩分・水分の調整、利尿薬の使用などで症状の改善を目指します。

副甲状腺疾患

副甲状腺疾患

副甲状腺は甲状腺の後ろ側にある小さな内分泌腺で、主な働きは副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌して、血液中のカルシウムとリンの量を調節することです。PTHは、骨からカルシウムを血液中に放出させたり、腎臓でカルシウムを再吸収させたり、ビタミンDの働きを活性化して腸からのカルシウム吸収を助けたりする作用があります。

⚫︎ 副甲状腺機能亢進症

副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌され、血液中のカルシウム値が異常に高くなる病気です。副甲状腺にできる良性腫瘍による「原発性副甲状腺機能亢進症」、慢性腎臓病などでカルシウムやリンのバランスが崩れた結果、副甲状腺が過剰に働く「続発性副甲状腺機能亢進症」に分かれます。症状は、だるさ、食欲不振、吐き気、便秘、頻尿、口の渇きなどがあり、長く続くと骨粗鬆症や腎結石を合併することもあります。治療は、原発性の場合は腫瘍を手術で摘出します。続発性の場合は、カルシウムやリンのバランスを整える薬やビタミンD製剤を使用します。

副腎疾患

副腎疾患

副腎は左右の腎臓の上にある小さな臓器で、副腎皮質では、アルドステロン・コルチゾール・アンドロゲン、副腎髄質では、アドレナリン・ノルアドレナリンを分泌します。これらのホルモンは、血圧・代謝・免疫・ストレス反応など、生命維持に欠かせない働きを担っています。

⚫︎ クッシング症候群

副腎皮質にできた良性腫瘍(副腎腺腫)や、まれに悪性腫瘍(副腎癌)によりコルチゾールが過剰に分泌される病気です。コルチゾールは、体の代謝やストレス反応を調整する重要なホルモンですが、過剰になると、顔が丸くなる(満月様顔貌)、首やお腹に脂肪がつく(中心性肥満)、皮膚が薄くなって赤い線(赤色皮膚線条)ができる、高血圧、糖尿病、筋力低下、骨粗鬆症、感染症にかかりやすくなる、女性では月経不順や多毛などの症状が現れます。治療は、手術で腫瘍を摘出するのが一般的です。手術後は、一時的に体がコルチゾール不足になることがあるため、薬でホルモンを補充しながら経過を見ます。悪性腫瘍の場合は、薬物療法や放射線治療を併用することもあります。

⚫︎ 原発性アルドステロン症

片方の副腎皮質にできた良性腫瘍や、両方の副腎皮質の過形成(腫れ)によってアルドステロンが過剰に分泌され、体内の塩分と水分のバランスが崩れる病気です。症状は、高血圧、筋力低下、四肢の麻痺などの他に、心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中、慢性腎臓病などを合併するリスクが高まります。治療は、片方の副腎に腫瘍がある場合は、手術で腫瘍を摘出するのが一般的です。両方の副腎が原因の場合や手術が難しい場合は、アルドステロンを抑える薬を使用します。

⚫︎ 褐色細胞腫

副腎髄質にできた腫瘍やまれに悪性腫瘍によりアドレナリンやノルアドレナリンが過剰に分泌される病気です。症状は、突然の血圧上昇、高血糖、頭痛、動悸、頻脈、発汗過多、不安感、便秘などの症状が現れます。治療は、手術で腫瘍を摘出するのが一般的です。手術前には、ホルモンの作用を抑える薬で血圧や心拍を安定させてから手術を行います。悪性の場合や転移がある場合は、薬物療法や放射線治療を併用することもあります。

⚫︎ 副腎偶発腫(インシデンタローマ)

他の病気の検査(CTやMRIなど)を行った際に、偶然に副腎に腫瘍が見つかる状態を指します。多くは良性で、特に症状がないことがほとんどですが、中にはホルモンを過剰に分泌する腫瘍(クッシング症候群や原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など)や、まれに悪性腫瘍の場合もあります。血液検査などで鑑別を行い、より詳しい検査が必要な場合は、高度医療機関にご紹介いたします。